先生に求められる能力の一つとして
リーダーシップ
があげられます。
しかし、むやみやたらにリーダー論を学んだところで
この人は、頭でっかちで威張っているだけだ。
この先生は、私のことなにもわかってくれない。
なんて事態になりかねません。
そこで本日は先生に身につけて欲しい「リーダーシップ」について話を進めていこうと思います。
特に「ある事象を例に、具体的にどのような「声かけ」をしたらよいか?」これについて、お話しようと思います。
目次
信用は、押しつけて得られるものじゃない
いい加減にしろ!言うことが分からないのか!!
ちゃんとしなさい!ちゃんと!
最近は「叱る」という指導も、気を遣うようになってきましたね。
それでも時として、先生は生徒に対して、声を荒げなければなりません。
教育上必要だから・・・と言えば、聞こえはいいですけど
やたら注意していれば、こっちが悪者になりますし
生徒との関係はもちろん、保護者との関係も悪くなります。
ついつい
- 言うことを聞かない生徒
- 何度言っても教師の指導にのってくれない生徒
このような生徒に対しては、上から目線で「命令」をしてしまいがちです。
しかし
命令ばかりしている先生は、生徒からの信用を得られていない。
ってことが多いです。
なぜか?
信用は、上から押しつけてばかりじゃ得られないからです。
生徒のシャツが出ているとき、あなたはどう指導しますか?
例えば、目の前にいる生徒の、服装が乱れていたとします。
こんな時、あなたならどう声かけしますか?
おい、シャツが出てるぞ。しまえ。
もちろんこの声かけで、シャツの裾をズボンの中にしまう生徒が多いでしょう。
しかし、この声かけが通用するのは
生徒との信頼関係が、既にある程度確立している状態
です。
例えば
- 赴任したばかりだとか
- 面識があまりない生徒だとか
- どうも付き合いにくい生徒だったりとか
これらの場合、最悪
見なかったことにしよう・・・。
とスルーしてしまう先生も、いるかもしれませんね。
信用がいまだ十分に得られていない先生は、生徒に対してどのような声かけをしてあげると、いいのでしょう?
信用を得るために、まず相手を信用すること
突然ですが、あなたは
フィードバック
という言葉をご存じでしょうか?
フィードバックとは、結果を原因に反映させること。
元々、回路制御で用いる言葉のようですが、最近はビジネスでよく使われる言葉です。
教育現場でも聞くようになりましたね。PDCAサイクルなんかとともに。
フィードバックで重要なのは
経営者や上司など上の立場の人が、従業員や部下に対して指導する時「効果的・効率的」に行うこと。
これだといわれています。
上の立場の人が、従業員や部下に対して指導する。
これは、リーダーシップを発揮することと同じです。
リーダーシップとは、指導者や指導者としての地位。人をまとめたり統率したりする能力のこと。
経営者や上司はもちろんのこと、先生にだって求められる能力です。
教師は、経営者や上司と似ている部分があります。
だからこそ、教師もきちんと「リーダーシップ」を身につけてもらいたい。
これからの時代「ティーチング」ではなく「コーチング」が重要だと言われています。
これからの教師の仕事はどう変わる?!働き方やスタイルの変化を予想してみる
「支援する」のが教師の役割だとしても、正しい「リーダシップ」は身につけておきたいものです。
リーダーシップやら経営者やらは、わかったけど
さっきの「シャツのくだり」の答えはなんなのさ?
忘れてない?
話を戻しますね。
「シャツが出ていた」という結果に対して、どのような声掛けをすれば、リーダーシップが発揮できるのか。
そのためには「フィードバックの5段階」が必要になってきます。
フィードバックの5段階とは?
フィードバックの5段階とは
- 事実指摘
- 主観や感想を伝える
- 評価
- 提案
- 命令
この5段階を意識して声掛けをしていくことをいいます。
事実指摘
生徒のシャツが出ている。
こんな時、まずは
シャツ出てるよ
と声掛けをします。
注意とは違います。
あくまで
「シャツが出ている事実だけを伝える」
です。
上から目線の先生は、この段階ですぐに
おい、シャツが出てるぞ!しまえ!
このように、5段階目の「命令」までしちゃいます。
早い、早い。
初めは、「気づかせること」
たったこれだけで、多くの生徒はシャツを自らしまうでしょう。
主観や感想を伝える
1度気づかせただけでは、変化が無い生徒もいるでしょう。
え?あ、そうですか。
と事実を受け止めただけ。
もしくは
また、シャツが出ている…。
と、2回目・3回目の場合もあるかもしれません。
事実を指摘しただけでは変わらなかった場合、次のステップに移ります。
主観を伝えます。
変だよ。
表現方法は、指導する学年やあなたの年齢にあった表現がいいと思います。
これによって、伝わり方も大きく違ってきます。
ただし、いきなり主観オンリーで声かけするのは危険です。
これでも効果的に伝わらなければ、次のステップです。
評価する
あなたの主観を伝えただけでは、ダメな場合
次は、客観性を持たせます。
すなわち
評価を与えます。
例えば
だらしがないよ?
という声かけです。
しかし、第3段階「評価」には注意が必要です。
なぜなら、主観と客観の違いをはっきりと区別をして、評価するのは案外難しいからです。
例えば
このイラストを見て、右側の生徒を「カッコイイ」と思う生徒はいるでしょう。
左側の生徒を「まじめでダサイ。」と言ってしまうような生徒でしょうね。
しかし「カッコイイ」という主観的な要素を取り除いて、客観的にみたら「だらしがない」のは、やはり右側です。
「ダサい、ダサくない」は客観性がありません。
評価は周りがするものです。
よって、本来「評価」というのは客観性しか存在しません。
無くしてほしいですね、「自己評価表」(笑)
しかし、評価をはき違えてしまうと、右側の生徒に対して
そんなダサイ恰好するなよ
これが「評価」だと思って、声かけをしてしまうかもしれません。
第2段階で効果が無かった生徒に対して、再び主観による意見や評価をすることは、あまりおススメできません。
評価する場合、あくまで客観的な判断で
ステップ3は、このことに注意しましょう。
提案
第3段階まできても、一向に改善が見られない…。
ここまで来た場合、ひょっとすると、生徒は
・・・どうしたらいいかわからない。何をしたらいいんだろう…?
という事態に陥っていることも、考えられます。
そこで次にあなたがするべきことは
提案をしてあげること
シャツ、しまったら?
指示待ちの生徒は、多くいると思います。
(そんな教育に携わってきた、一人です。…反省。)
自ら考えて行動するのが、苦手な生徒も多いです。
そんなときは、指導者であるあなたが「こうすれば良くなる」という提案まで、してあげてください。
命令する
いよいよ最終フェーズです。
提案したにも関わらず、それを実行しようとしない。
そんな時は
今すぐ、シャツをしまいなさい。
このように
「命令」をすることになります。
逆にいえば
「命令」をするのは、最終段階に来た時だけです。
完全にスルー、鬼スルー、ノータッチ、ノーリアクション、バックオーライ。
こんな状況になったときだけです。
命令するのは、最後でいいです。
- 事実指摘
- 主観や感想を伝える
- 評価
- 提案
- 命令
この順番が、大事になってきます。
生徒を信用して声かけ、主体性を促す
上から目線で頭ごなしに叱りつけず
「フィードバックの5段階」を活用することで
生徒の主体性がうながされる。
その結果、生徒はあなたのことを信用して、自ら行動し始めます。
大事なのは、生徒から信用されること。
そのために、まず
生徒を信用する、主体性を促す
このことが、大切です。
応用も利かせられる
フィードバックの5段階は、生徒の主体性を促すものなので、様々な場面に、応用が利かせられます。
部活指導なんかもそうです。
よし、次は○○の練習だ!準備しろ!
はいっ!
これで何の問題もありません。特に運動部なんかは。
しかし、ここでフィードバックの5段階を活用する。
○事実を伝える
この間の試合、○○ができなかったな。
はい。
○主観
俺は、それが悔しかった。
はい。
○客観的評価
勝てたチームは、○○が上手かったな。
そうですね。
○提案
○○を強化したいんだが、こんな練習をしないか?
わかりました。
○命令
さ、準備しろ!
はい!
といった感じで
生徒にとっても(場合によっては、先生にも)
フィードバックの5段階を応用すれば「なんのために指導されているのか、何が欠けていたのか」が明確になり
練習も、より質の高いものになるかもしれません。
特にスポーツの場合
試合中は「生徒一人ひとり」が「自ら考えて」動かなくてはならないので
主体性を向上させて、練習に取り組ませることは非常に効果的だと思います。
現実的にはそう上手くいくことばかりじゃ無いと思います。
しかし、頭のどこかに置いておけば、活かされこともあるハズです。
なぜ、主体性を促すことで信用を得られるのか?
心理学的に
返報性の原理(法則)
というものがあります。
人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。
引用 Wikipedia
生徒が自分を信用していない(フラットまたはマイナス)状態で、命令しても
は?うっとおしいんですけど。
となりかねませんが
フィードバックの5段階を意識した声かけならば
段階によりますが、総じて「生徒自身に行動のオンオフ」を委ねているので
先生は、自分で気づかなかったことを教えてくれた。
と、なりやすく
この先生が言うなら、間違い無い。
という心理がはたらき、最終的には
この先生についていきたい、褒められたい、認められたい。
と考えるようになることが期待されます。
この「フィードバックの5段階」が万能だと思いません。
なぜなら
教師は、目の前の生徒にあわせた指導が必要だからです。
詳しくはコチラの記事にまとめていますので、ご覧下さい。
それでも
頭ごなしに叱ってばかりいる先生と、生徒の自主性を促すように指導する先生。
生徒はどちらの先生に対して、信用を高めていきやすいか?
これを考えれば、自ずと答えは見えてくるはずです。
リーダーシップを発揮するために、必要な声かけのまとめ
教師としてリーダーシップを発揮したいとき
生徒からの信用(信頼)が必要になります。
その信用関係(信頼関係)を構築する上で
生徒に対して「フィードバック」することが必要になってきます。
そこで、生徒へフィードバックするときに、次のような段階を意識します。
- 事実指摘
- 主観や感想を伝える
- 評価
- 提案
- 命令
イマイチ、生徒がこちらを向いてくれない。
指示したことを、生徒が聞いてくれない。
と悩んでいるあなた。
ぜひ「フィードバックの5段階」を実践して
教師に必要なリーダーシップを、身につけてください。
最後に
この記事を書くに当たって参考になった本と記事の紹介です。
スティーブンRコヴィー「7つの習慣」です。
ビジネス書として非常に有名だそうで
「リーダーシップ」を身につけたい人にとって、必読の一冊だそうです。
ただ、500ページ以上もある・・・。
うぅ、読むのに時間が・・・
というあなた。
こちらがオススメです。
こちらは漫画版で、ボリューム的にも非常に読みやすかったです。
参考にした記事はコチラ。同僚や目下の人から信頼され、味方になってもらうには?
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